加齢・若年黄斑変性

加齢黄斑変性(AMD)は高齢者の黄斑部の網膜色素上皮、Bruch膜、脈絡膜毛細血管の加齢変化が原因で起こる疾患です。
物を見る中心部である黄斑が変性するため、中心視力の低下、中心暗点をきたす難治性疾患です。
変性の型によって、滲出型、非滲(出型の2つに分けられます。

正常な見え方

正常な見え方

加齢黄斑変性の見え方の一例

加齢黄斑変性の見え方

加齢黄斑変性の分類

滲出型(wet type)

黄斑の網膜下や網膜色素上皮下に脈絡膜から新生血管(脈絡膜申請血管)が伸展し、溶出や出血を生じて、最終的には瘢痕組織を形成するものをいいます。一般に、加齢黄斑変性といえばこの型を示します。
黄斑下に見られる脈絡膜新生血管(CNV)は主に網膜下(感覚網膜と網膜色素上皮の間)に存在するⅡ型と網膜色素上皮下に存在するⅠ型とに分けられます。
CNVは脆く、血液中の水分や蛋白、脂肪などの漏出や出血によって黄斑の機能を障害するため、変視症(ゆがんで見える)や中心暗点(視野の中心が暗く欠けて見える)、急激な視力低下などが自覚症状として挙げられます。ただ、周辺部には変化がないため、大量の網膜化、硝子体出血がないかぎり、光覚を失うことはありません。

非滲出型・萎縮型(dry type)

網膜色素上皮や脈絡膜毛細血管板の萎縮をさすもので、黄斑部にドルーゼンや網膜色素上皮の萎縮がみられる他には異常を認めないものをいいます。なお、CNVは関与しません。
進行は緩やかで、萎縮が中心窩に及ばないかぎり高度の視力低下をきたすことはありません。
滲出型に移行することもあるため定期的な検査を行います。

眼科での治療方法

内科的治療

出血予防のため止血薬を用いたり、網膜に栄養を与えるビタミン(C,E、βカロテン)や亜鉛などの栄養薬(サプリメント)

レーザー光凝固(PDT)

新生血管をレーザーで破壊する治療法で、新生血管の全体凝固と栄養血管凝固があります。新生血管だけではなく、その部分の網膜にも障害を与えるため、中心窩に近いと行う事ができません。
中心窩下に病巣を有するものにはビズタインという光感受性物質を静脈内投与し、レーザーを照射することで、CNVのみを閉塞させる方法、光線力学療法(PDT)が行われます。
以前は主流の治療でしたが、現在は抗VEGF薬治療が主流になっています。

硝子体注射

抗VEGF薬やステロイド薬の硝子体注射により、脈絡膜新生血管の成長をおさえます。
現在は硝子体への抗VEGF製剤の注射による治療法が主流で、アバスチンやルセンティス、マクジェンや新薬のアイリーアなどが出ており、研究も盛んです。

外科的治療

網膜下のCNVを摘出する方法(脈絡膜新生血管抜去術)、網膜を正常な網膜色素上皮に移動させる方法(中心窩移動術)

若年性黄斑変性(脈絡膜新生血管)

50歳未満で網膜黄斑部に発症する脈絡膜新生血管で、若年性黄斑変性とも言われます。
女性に比較的多く片眼性ですが、両眼に発症する場合もあります。
50歳以上で発生した場合は加齢黄斑変性の診断名になります。

当院での治療方法

当院で行う鍼治療により、目の周囲の血流を改善し、炎症や出血を効果的に吸収させることで、視力や変視症、中心暗点の改善・維持を行います。
現在の眼科での治療は抗VEGF抗体が主流ですが、新生血管を発生させている根本原因を治療する物ではありません。
視力低下が急激に進行している場合など大きな効果を得られる場合も多いですが、新生血管が再発し、定期的に抗VEGF抗体の注射を行わなければならない例も多いです。
当院でも、抗VEGF抗体を打ちづつける事に不安を感じ来院される方が多数みえます。
鍼灸治療を行う事で、眼底周囲の血流が改善されることで、良好な状態が維持し、悪化や再発の危険性を大きく減らすことができます。
加齢黄斑変性の前駆病変としての軟性ドルーゼンや網膜色素上皮異常の段階で鍼灸治療を行う事で、黄斑変性の進行を防ぐ効果もあります。

治療初期は視力の上昇や変視の改善が確認されるまでは週に2回(3~6ヶ月程度まで・通常は3ヶ月)、可能な限り良好な視力の確保や変症の改善を目標とする期間は週1回(3~12ヶ月程度まで)、その後は視力等の維持や再発を防止するための治療間隔として隔週1回から月に1回程度へ徐々に治療間隔を延長していきます。
状態が良好な方や視力低下・変視の少ない方や加齢黄斑変性の前駆病変があり、予防のための治療の場合は週1回の治療から開始し、状態を確認しながら徐々に間隔を空けていきます。

当院での測定・評価方法

視力変視(歪み)の状態は当院の検査機器により効果判定を行い、歪みの範囲や強さを測定し、治療の効果判定を行います。
視力測定・評価法をご覧下さい。

当院での症例

症例1 60代 男性 加齢黄斑変性

症状

平成25年に右目の加齢黄斑変性と診断。
眼科でアバスチン注射等を行う。視力の低下および軽度の変視あり。右眼の変視と視力低下強い。歪みの強さはM-CHARTSは0.5°

治療経過

【初診時】
右0.5 左0.8
【8診目】
右0.9 左0.9 右目の変視はかなり軽くなる。視力も出てくる。
【25診目】
右1.0 左0.9 右目の変視は取れ、安定する。アイチェックチャートでもMチャートでも歪みはなし。
【変視の範囲】
初診時:左  25診時:右

初診時25診時

ゆがみが消失しています。眼科での検査でもゆがみが無くなった事を確認しています。

院長からひとこと

本症例は発症から歪みの強さや視力低下の程度が比較的低かったため、良い成績を得られました。
現在は状態の維持と悪化の防止を目標に施術を継続中です。

症例2 30代 女性 若年性黄斑変性(脈絡膜新生血管)

症状

平成25年4月頃、朝マラソンしていて違和感を覚え眼科を受診。
左目の脈絡膜新生血管の診断を受ける。
アバスチン(抗VEGF製剤)の治療を受け、一度目は歪みが大きく改善するも二か月後には再発。二度目はあまり効果なし。
アバスチン注射を打ち続ける事に不安を感じ、可能であるなら回避したいとの目的で平成25年12月に当院受診。
視力は両眼1.5。
変視(ゆがみ)は左目の右上の部分に強い歪み。
歪みの強さはM-CHARTSで2.0°以上。

治療経過

【治療2か月目】
歪みの減少を自覚。
日常では気にならない。
M-CHARTSで1.1°と半分以下に歪みが減る。
アイチェックチャートでも歪みの範囲の減少を確認。
当初の目標のアバスチンも回避出来、状態が良くなり眼科でも経過観察となりました。
【変視の範囲】
初診時:左  治療2か月目:右

初診時25診時

院長からひとこと

発症から早い段階で施術を行えた事が大きいです。
ご本人も仕事の合間など時間を作って頂き、週二回のペースで施術を行えました。
脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)は加齢黄斑変性に比べると、年齢が若い分網膜の回復力が高く、こちらが思っている以上の回復を見せる症例も多いです。

この症状の患者様の声

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