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視細胞の維持に必要な遺伝子の異常で視細胞が徐々に変性し消失してしまう疾患です。
視細胞には網膜の周辺部に多く暗い所で働く杆体と、網膜の中央部(黄斑部)に多く明るい所で働く錐体の2種類があります。
杆体の異常では暗い所で見えにくい夜盲(とり目)と呼ばれる状態になります。また網膜の周辺部が障害されるので、視野狭窄をきたします。視野狭窄は徐々に進行し、さらに錐体も機能が低下し、視力が低下します。
一方、錐体の異常では色覚の異常が現れ、また網膜も中央部が働きませんので、中心暗点や視力低下が起こります。しかし、周辺部は正常ですので、全体が見えないという状態には至りません。
網膜色素変性症では、まず最初に夜盲の症状が自覚されます。
進行すると物にぶつかったりつまずいたりすることに気づき(視野異常による)、眼科で眼底検査、視野検査をして診断しますが、眼底検査では網膜の変性、網膜の血管の狭細化が認められます。
網膜の特徴的な色素沈着が疾患名の由来ですが、初期には色素沈着がないこともあり、眼底検査だけでは見逃される場合もあります。
視力視野に変化のない時期でも網膜電図(ERG)には影響があり、a波やb波の振幅低下や消失が起こっているため診断に役立ちます。
錐体ジストロフィは主な症状は視力低下です。
眼底検査では初期には異常を認めないことも多く、原因不明の視力低下と考えられ診断が難しいことがあります。
ERGでは錐体の機能を反映するといわれるフリッカーERGや明順応ERGで異常を認めます。
また、色覚異常も診断の助けとなります。変性が進むと標的黄斑症と呼ばれる変性を示します。
どちらの疾患も遺伝子異常が原因であり、現在根本的な治療法はありません。
遺伝子治療、人工網膜や細胞移植の研究が進められていますが、まだ実用化はされていません。
網膜色素変性でも錐体ジストロフィでも、羞明が起こります。
羞明に対しては比較的視野が暗くならずにまぶしい光の波長を遮断する効果のある遮光眼鏡が処方されます。
対症療法としてビタミンAやその仲間の服用、循環改善薬の服用、暗順応の改善薬(アダプチノール)などがあります。
緑内障などで眼圧を下げるレスキュラ点眼などが一部の網膜色素変性症に効果があったとの報告もあります。
レスキュラは現在、網膜色素変性症用に濃度が変更されたオキュセバとして治験を進めていましたが、現在はストップしています。(2015.06.25現在)
網膜色素変性症に関しては鍼灸の古典の文献にも様々な記載があります。
夜になると、あるいは昼夜暗い処へ入ると、物がはっきり見えなくなるものを夜盲という。
雀や鳥に似て、夕方になると物が見えなくなる。このためこれを「雀目」「鶏盲」(鳥目のこと)という。
網膜色素変性症は「高風雀目」といい、本病の多くは、先天の禀賦不足、肝腎の不足、肝鬱気滞、あるいは脾胃の損傷により起こります。
網膜色素変性症の治療において、目の血流(肝血)を補うことが大切です。
目の血流は体全体の血流とも関連しているため、体全体の調整を行いながら目周辺への局所の鍼を行うことで治療を行います。
ただ、完全に変性が進行してしまっている部分に関しては改善は難しいです。
現在変性が進行中の部分の改善・維持および、残存している視力・視野の維持を目的に治療を行います。
治療内容としては、首肩の経穴(ツボ)および背中の肝腎といった血に関係する経穴に鍼をします。
次に、目の血流を良くする経穴および目周囲に鍼をして、目の血流を補う治療を行います。
治療のペースとしては最初の3か月は週2回のペースで集中的に治療を行うことで視力・視野の回復を目的に治療を行います。
その後は良好な状態の維持を目的とし、週1回にしていき、状態を見ながら徐々に治療のペースを空けていきます。
効果判定に関しては定期的に視力検査と視野検査を行います。
視力も2.0~0.04まで測定可能です。
白黒反転機能で通常の視力検査器ではまぶしくて見にくい網膜色素変性症の方の正確な視力も測定可能です。
視野の状態に関しても、アイチェックチャートで視野の側的を行うことで、効果判定を行います。
網膜色素変性症の治療直後で聞かれた感想です。
20代の頃に発症。
徐々に視力低下、視野狭窄が進み、当院受診時は視力 右0.4 左0.9 視野も10度以内とかなり狭窄が進んだ状態。
進行性の網膜色素変性症でも視力・視野の拡大が見られた症例です。
治療以外にもご本人が運動をしたり漢方を飲んだりと目の血流を増加させる事を色々行った事も良い結果につながったと思います。
進行度合いは各々違うため、すべての方が良い結果が得られるわけではないですが、適切な頻度で鍼灸治療を行う事で進行のブレーキになると思います。
20代の頃に発症。
徐々に視力低下、視野狭窄が進み、夜盲の症状も強く出ており日常生活に支障が出ている。当院受診時は
視力 右0.2左0.3 視野は左目は中心狭窄が進んでいるが、右目は比較的視野が残っており、中心の視力低下が一番の問題。
目の疲れからの頭痛も良く起こる。
左目に比べると右目は視野狭窄も強いため、左の方が視力が先に上がりましたが、右も徐々にですが上がってきています。
治療を開始して1年たちますが、視野も初期の状態を維持しており、進行のブレーキになっています。
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