複視(眼球運動障害)

 

複視(眼球運動障害)

立体視は物の奥行きを認識する機能で、単眼視(たんがんし)では成立しにくい機能です。左右の眼の網膜に映った像を脳で1つにまとめる融像(ゆうぞう)という作業を経て成立します。
このとき、片眼6本、両眼で12本の外眼筋が協調し眼位を指標に向かって動かして単一視を維持しますが、これが障害されると物が二重に見えます(複像)。

正常な見え方

複視の見え方の一例(外転神経麻痺)

複視を起こす疾患

  • ① 脳内の動脈瘤や梗塞など
  • ② 動眼神経麻痺など外眼筋を支配する神経の異常
  • ③ 神経と筋の接合部(情報伝達システム)に異常の出る筋無力症など
  • ④ 外眼筋に異常のあるバセドウ病など
  • ⑤ 眼球の動きを物理的に疎外する眼窩底骨折や眼窩腫瘍など

鍼灸による治療においては、上記の②、④、⑤が対象となります。脳内の動脈瘤や梗塞や腫瘍など、物理的に阻害されているものに関しては、鍼灸の対象外となりますので、眼科の受診をお勧めします。
特に動眼神経麻痺後の後遺症、眼底骨折後の後遺症、バセドウ病による複視に対しては効果が高いです。

当院での治療方法

複視の原因は上記であげた様々な原因が挙げられますが、主症状の物が二重に見える以外に、随伴症状として複視による歩行時のふらつき、視力の低下などがあります。
治療で複視の症状が改善すると、歩行のふらつきや視力の低下も改善していきます。
当院では視力測定器で定期的に視力を測定しながら、赤緑めがねを使った立体視やWorth4灯テストで複視の状態を測定しながら治療を行っていきます。

治療当初は症状に応じて、最初の三か月は週1~2回で治療を行い、症状が緩和してきた所で治療ペースを隔週へと徐々に空けていきます。
複視などの眼の症状は、外出が不安で外にほとんど出なくなったり、ふらつきが不安で電車等にのれなくなるなど生活で困ってしまう事も発生します。
当院で治療を行うことで、複視が改善し元通りの生活に戻れた患者さんも見えますので、一度ご相談下さい。

当院での測定・評価方法

視力測定・評価法をご覧下さい。

当院の症例

第38回眼科と東洋医学研究会にて「鍼施術により複視が早期回復した2症例」を発表しました。

症例1 70代 女性 動眼神経麻痺による複視

症状

平成25年6月に朝起きると複視(物が二重に見える)が発症。眼科を受診。
白内障の診断を受け手術を行うも複視は改善せず。
当初は右目に眼球運動障害有り。
眼球運動は現在は問題無し。

当院測定結果

【初診時】
右0.6 左0.6 クロスリングテスト(立体視の検査)でも大きなずれを確認。
【5診目】
右0.4 左 0.6 複視のためふらつきで外出を控えており、地下鉄に乗れなかったが今日は地下鉄で来ることが出来たとの事。
【16診目】
右0.7 左0.7 クロスリングテストのずれも以前より少なくなってきている。
外出に不安はなくなったが、まだ複視の症状は残る。
【21診目】
右1.0 左0.7 複視も改善し、ふらつきもほとんど起きない。

 

治療経過とまとめ

動眼神経麻痺後の複視の症例ですが、治療を進めていき複視は改善しました。複視の改善と共に二重に見えていた部分も解消されたので、視力も同時に向上したと考えられます。現在は元々のパニック障害や時々起こる腰痛の治療のため定期的に通われています。
完治から1年以上たちますが、複視は再発していません(H27.7現在)

症例2 50代 女性 外転神経麻痺による複視

症状

4~5日前から急に物が二重に見える。
脳に問題が無いか不安を感じ、脳神経外科を受診するが異常は無し。
眼科を受診し右目の外転神経麻痺による複視と診断され、ビタミン剤を処方。
複視の症状が続く事への不安を感じ当院を受診。

当院測定結果

【初診時】
右0.8 左1.2 クロスリングテスト(立体視の検査)でも右方向に大きなずれを確認。
【2診目】
右0.8 左 1.2 治療後2日間は楽だった。今日も調子良い。
【4診目】
右0.9 左1.2 複視の症状は出ていない。羞明の症状も出ていたが、そちらも改善してきている。クロスリングテストのずれも少なくなっている。
【7診目】
複視は落ち着いている。クロスリングテストの結果も正常になる。眼科を受診すると複視は完治したとの診断で経過観察になる。

 

治療経過とまとめ

発症後10日で治療を開始した症例です。
複視の症状も固定化されておらず、症状が出たり出なかったりしていた早期の状態で治療を行えたので、早い段階で症状が治まりました。
複視も発症から1年以上たってしまうと症状が固定化され、鍼灸での治療効果が出にくくなる症例が多いので、早い段階での治療の開始をお勧めします。

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