院長の伊藤です。
3月13日(日)に「第38回 眼科と東洋医学 研究会」がオンラインで開催されました。
今回、一般演題で「鍼施術により複視が早期回復した2症例」を発表する機会を頂くことが出来ました。
発表に使用したスライドを公開しますので、時間の関係で本番では話せなかった内容も加えて解説したいと思います。
複視に対する鍼治療の効果を知って頂けたら嬉しく思います。
昨年の眼科と東洋医学では緑内障について発表しましたが、本年は複視について発表しました。
複視は当院で緑内障に続いて来院が多い疾患です。
正確には両眼複視と言い、両眼で見ると物が2重に見えるのですが、
片目を閉じると正常に見えます。
病気が原因の場合もありますが、特に原因が無く外眼筋(目を動かす筋肉)の動きが悪くなり起こるケースが多いです。
複視を起こす原因は上記の6つがあります。
当院では②、④に非常に効果があります。
①や③、⑤も軽度であれば効果がある例もありますが、原因疾患の治療が必須になります。
複視(外転神経麻痺)になると右図のような横にずれる見え方になります。
ずれの大きさは複視の状態によって変わります。
片目を閉じると正常に見えますが、運転が出来なくなったり、外出が出来なくなったりと日常で多くの不便を強いられます。
治療方針としては瘀血阻滞(血液の流れが停滞する事)による眼球運動障害として施術を行なっています。
評価方法は上記の3つで行っています。
クロスリングテストは映画館の3D眼鏡みたいな特殊な眼鏡を使ってみる事で立体視を確認する検査です。
複視で物がずれて見えるという事は立体視が行えていないため、正常時はリングの中に赤い十字が入っていますが、
複視の場合はリングから赤い十字が外れて見える事になります。
症例1です。
糖尿病がありHbA1cが6.9と高値です。
複視は糖尿病や脳梗塞の既往歴があると、外眼筋(目を動かす筋肉)への血流が悪く複視を起こしやすいです。
その場合、治療で良くなっても糖尿病の悪化などで再発する例があるので、原因疾患を悪化させない事が重要です。
症例1の経過です。
回数を重ねるごとに少しづつ改善していき、21診目では車の運転を再開出来ました。
クロスリングテストの推移では、初診ではリングから大きく外れていましたが施術を重ねることにずれが改善していきました。
15診目でずれが半減し、21診目で正常な状態に戻りました。
症例2です。
過去に小脳出血の既往歴があり、今回の複視の発生でも外眼筋に関係する目の血流の問題があった可能性があります。
症例2の経過です。
この症例では目の動きの変化が早く、5診目で動かなかった左目が動くようになりました。
その後は施術を重ねるごとに動きが良くなり、17診目では日常で2重に見えることはほとんど無くなりました。
症例2の左眼の動きの画像です。
初診時は左を向いてもらっても目が全く動かない状態でしたが、17診目では右眼と同じくスムーズに動いています。
考察・課題です。
複視は鍼治療が有効なケースがあり、回復を早められると考えられます。
ただ、回復ペースは個人差があるので当院では完治までおおよそ3カ月を目標に治療を行っています。
課題に上げている治療開始時期ですが、当院での複視の施術を行った場合、1年以内であれば7~8割は改善しています。
中には完治しなかった(複視が一部残ってしまった)ケースもありますが、治療当初よりは見やすくなり、生活は大幅に改善しています。
1年を超えてしまうと症状が固定されてしまい、改善が5割以下に減ってしまうので、早期の施術開始が重要です。
眼球運動以外の複視も動脈瘤による動眼神経麻痺などで改善したケースもありますが、まだまだ症例は少ないです。
甲状腺眼症による複視は針灸の効果は高いです。
複視は当院で緑内障に続いて来院が多い疾患です。
眼科では経過観察になる事がほとんどですが、鍼灸で回復が早くなる事を知って貰えたら嬉しいです。
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