鍼施術により初期緑内障の視野に変化があった2症例

院長の伊藤です。

5月23日(日)に「第37回 眼科と東洋医学 研究会」がオンラインで開催されました。
今回、一般演題で「鍼施術により初期緑内障の視野に変化があった2症例」を発表する機会を頂くことが出来ました。
発表に使用したスライドを公開しますので、緑内障に対する鍼治療の効果を知って頂けたら嬉しく思います。

 

今回の発表では当院に通われている2名の正常眼圧緑内障の方の視野の変化について発表させて頂きました。

対象・評価は上記の通りです。
視野検査は慣れていないと正確な結果が得られないため、3回以上の実施で視野・MD値の変化を見ています。

施術方法は上記に記した首肩・背部・四肢・顔面部の経穴(ツボ)使用しています。
当院では伏臥位(うつぶせ)→仰臥位(あおむけ)の順で鍼を行います。

この症例の女性は正常眼圧緑内障の他に喘息があります。
ステロイドの吸入は緑内障には直接関係無いと言われていますが、当院でアトピーや喘息で慢性的にステロイドを使用している緑内障の患者さんが視野が進行するケースを多数見ているので、喘息発作を減らしてステロイドの使用を減らすことも目標としています。

症例1の右眼の視野・MD値の推移です。
中心付近や上部にある感度が低下した箇所(グレーの部分)が少なくなっています。
下方にある視野の欠損部分(黒い箇所)は変化がありません。
MD値も-8.40→-7.60→-6,85と改善しています。
※MD値は緑内障の視野欠損の範囲を数値で表した値で、マイナスの数値が大きくなるほど視野欠損が進行したことになります。

症例1の左眼の視野・MD値の推移です。
視野上方の感度低下部分が、徐々に減少しています。
MD値も-5.82→-3.87→-2.58と改善しています。

症例2です。
この症例の女性は左目だけに視野の感度低下の箇所があります。
元々点眼薬を使用していましたが、2019年にレーザー虹彩切開術を行っています。

左眼の視野の推移です。
右上方の感度低下の箇所が減少しています。
MD値も-1.57→-1.57→-0.01と減少しています。

考察として、鍼治療が正常眼圧緑内障の感度低下の箇所に変化をもたらす可能性がありる事が分かりました。
ただ、視野欠損まで進行した箇所は改善が難しいです(正常眼圧緑内障の視野は「正常→感度低下→視野欠損」と進行します)

課題としては、長期的な視野の維持の確認が必要です。
せっかく状態が良くなっても、良い状態が今後も維持出来ないと意味がないので、
少しづつ治療間隔を空けながら無理ないペースで鍼治療を続けていき、長期的な視野の状態を見ていく必要があります。
当院では5年くらい通って視野を維持している方はいますが、今後もより長期的なデータを取っていきたいと思います。

また、すべての緑内障に確実に鍼が有効ではなく、進行が進むと視神経や網膜が弱ってしまい、効果が出にくくなります。
また進行がすごく早く、鍼をしていても進行が止められないケースもあります。
今後もより高い効果が出せる方法を探っていきたいと思います。

 

 

関連記事

勉強会

昨日は北辰会(鍼灸の勉強会)で大阪に行ってきました。 午前は実技で背候診(背中のツボの状態を見る)、午後は代表の講演でした。 最近は車ばかりで、久しぶりにアーバンライナーで行ったんですがほとんど寝てました(笑) 行くと本[…]

[» 続きを見る]

スマホ老眼にご注意を!

先日テレビを見ていたら、「スマホ老眼」の特集をやっていました。 スマホ老眼とは20、30代なのに手元が見にくいといった老眼のような症状に悩む人が増えているそうです。 スマートフォンの長時間の使用による目の疲れにより、目の[…]

[» 続きを見る]

網膜色素変性症と漢方

現在、自分自身の目の状態は鍼灸治療と日常の体調管理で大きな悪化もなく順調に過ごせています。 さらなる視力・視野の状態の向上を目指して、現在漢方を試験的に服用しています。 服用している漢方は 「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう[…]

[» 続きを見る]

胃の不快感とお灸

昨日は午後の施術を終えて家に戻ると、妹が胃の調子を崩して寝ていました(^_^;) どうも昼・夜ととんかつなどの油ものをお腹いっぱいに食べたのが原因とのこと。 気持ち悪くて、戻したくても戻せない状態です。 そこで脈や舌など[…]

[» 続きを見る]

変視症定量評価チャート

変視症定量評価チャートのM-CHARTSを購入しました。 一般的に各種黄斑疾患(黄斑前膜、黄斑円孔、加齢黄斑変性など)の変視症はアムスラーチャートを使うのが一般的だと思います。 アムスラーチャートは変視症の発見から、偏視[…]

[» 続きを見る]